豚は、1年間に20〜26頭も子豚を生み、1.5kg程度で生まれた子豚も半年間で80倍の110kgにもなります。 なんとも驚くべき繁殖性と増体の能力を持っています。 この能力のおかげで豚肉は私達の身近な畜産物として、食べることができています。 畜産として素晴らしい能力をもつ豚ですが、その一方、病気に対してはとても弱い畜種です。 畜産として素晴らしい能力をもつ豚ですが、養豚場では病気を防いで、健康な豚を育てるために病気を侵入させないバイオセキュリテイを特に重視しています。
農場をフェンスで囲い、外部からの車両、人、動物が入ってくるのを防ぎます。 豚の導入や出荷、飼料の搬入もフェンスの外から行えて、車両や人が農場内に入らないレイアウトの農場も増えています。 農場に入るには決められたルールを守らないといけません。
フェンスで囲って病気を持ち込む車両、人、動物が入ってくるのを防ぐ
子豚を生むための種豚(母豚や雄豚)や、人工授精(AI)用の精液は種豚メーカーから購入します。 種豚メーカーは厳格なバイオセキュリティを実施していて、主な病気がないことを保証した豚や精液を販売しています。 種豚は農場の一番離れたところにある隔離豚舎に導入します。豚はこの隔離豚舎で検査やワクチン接種を行い隔離検疫の期間を過ごして、初めて農場内に導入されます。
種豚を導入する隔離検疫豚舎
主な病気がないことを保証された精液を購入
豚はトラックで出荷し、出荷先の屠畜場は多くの豚がいます。出荷から帰ってきたトラックが病気を持ち込むことを防ぐため、トラックが農場内に入らないような工夫や、出荷トラックの洗浄と消毒は特に気を使っています。
出荷台からの出荷でトラックは農場に入らない
出荷トラックの洗浄と消毒
最近では原則として「見学者はお断り」の養豚場が増えています。病気が侵入するリスクが大きいからです。どうしても見学者を迎え入れる場合は「過去○時間、他の農場や畜産関連施設に立ち寄っていないこと」など農場ごとに決められた防疫ルールに従います。養豚場で働くスタッフも農場に入る時は農場専用の作業着と長靴に履き替えます。シャワーを浴びないと農場に入れないシャワーインの養豚場も増えています。食品(豚肉)をつくる農場は、食品工場と同じように、衛生的なスタッフが豚の世話をして、病気を防いでいます。
シャワーを浴びてから農場に入る
お弁当、飲み物などは紫外線パスボックスに入れる
農場内に車両が入らないレイアウトでない農場は、農場内に車両が入る場合は出来る限り生産エリアには入らない工夫や、車両の消毒を徹底します。 特にタイヤは重点的に消毒をします。
タイヤの消毒
車両の消毒ゲートを通らないと敷地に入れない
豚が食べる飼料は、飼料メーカーの品質保証がされています。飼料を運ぶトラックが農場内に入らないで飼料を搬入できるレイアウトの農場も増えています。 豚が飲む水は定期的な水質検査や、水道と同じ塩素消毒をする農場もあります。
農場内に入らないで飼料を投入できる
農場で使う資材や機材はコンテナに入れて、燻煙消毒をしてから農場内に入れます。
コンテナで燻煙消毒をしてから農場内に搬入
鳥やネズミが病気を運ぶことを防ぐため、防鳥ネットや業者による定期的なネズミの駆除をします。
出荷台からの出荷でトラックは農場に入らない
豚はトラックで出荷し、出荷先の屠畜場は多くの豚がいます。出荷から帰ってきたトラックが病気を持ち込むことを防ぐため、トラックが農場内に入らないような工夫や、出荷トラックの洗浄と消毒は特に気を使っています。
防鳥ネットの設置
より健康な豚を育て、消費者に安全な豚肉を届けるために養豚場は豚の病気には特に気をつかっています。病気を防ぐためには、農場内に病気を入れないことが大事です。食品をつくるため、食品工場と同じ意識で衛生的に豚を育てています。
-農場内に「病気を持ち込まない!」「病気を広げない!」「病気を持ち出さない!」- 消費者のみなさまの食卓に安全な豚肉を届けるために、養豚場では豚を健康に飼育する様々な努力をしています。養豚場では農場の外から病気を侵入させない農場外のバイオセキュリティと、農場の中で豚を衛生的に育てる農場内のバイオセキュリティを重視しています。
衛生的な管理を心がけて、細菌やウイルスなど豚の病気の原因となる微生物が農場内に広がることを防ぎます。農場の中で毎日豚を育てるスタッフは、豚舎に入るときは長靴を交換して消毒槽で長靴を消毒します。また、衣服、帽子、マスクは病気の原因となる微生物を運ばないように取り換えます。豚舎に入るときには手指もアルコールで消毒します。決められたエリアごとに長靴や衣服を交換する農場も増えています。
豚を飼育する豚房は、水洗と消毒、乾燥をしっかりと行います。豚を入れたときに豚房に病気の原因になる微生物がいないようにするためです。
豚の成長に合わせて豚舎を移動させますが、豚を移動するときも衛生面に気をつかいます。以前は農場内を豚を歩かせて移動する方法が主流でしたが、最近では病気の対策のため衛生的に完備されたコンテナでの移動をする農場も増えてきています。豚の移動する経路や豚舎の使用方法をピッグフローといいますが、ピッグフローは小さい子豚から成長に合わせて一方通行になること、車両や人の経路と交差しないフローを考えて、病気の原因となる微生物が豚に接することを防ぎます。
豚が病気になるのを防ぐために、ワクチンを接種して免疫力をつけます。まだ体の弱い子豚の時期は、病気になるのを予防するために飼料や水に抗菌性物質や、生菌剤、ミネラルなどを混ぜて与えることもあります。養豚場では、病気になるのを予防することをとても大事にしています。こうした取り組みは、養豚管理獣医師の指示のもとにおこないます。
養豚場にはとてもたくさんの豚がいます。 病気を予防する対策をしていっても、どうしても体が弱い豚もでてきてしまいます。 病気になった豚は、早いうちに隔離豚房に移して手厚く治療をして健康な状態に戻します。 これは、1個体のためだけでなく他の個体に病気を広げないためでもあります。 学校に通学している児童(子供)が風邪を引いたら、早めに家に帰します。 そして家で薬を飲んで栄養と休息を充分に取り、病気が治ってから通学を開始することに似ています。
養豚場では、安全な豚肉を消費者の皆様の食卓に届けるために、こうして農場内のバイオセキュリティーの向上に取り組んで、健康な豚を育てています。