動物のお医者さんと聞くと、街の犬猫の小動物病院を想像する方も多いと思いますが、養豚管理獣医師(豚の獣医)の仕事はちょっと違うものです。
日本の養豚場は家族経営の農場では400~1,000頭、大規模農場では3,000~6,000頭、企業養豚では30,000頭を越える豚がひとつの農場にいます。たくさんの豚がいる農場で、養豚管理獣医師は豚を病気にさせずに健康に育てる「予防衛生」という観点から、定期的に農場を訪れ農場全体の状態をチェックします。
家族で経営している母豚200頭の農場 農場には2,000頭の豚がいます
母豚2,500頭の企業養豚 年間の出荷頭数は5万頭にもなります
養豚管理獣医師は、豚1頭1頭の「個体」の診療と治療も行いますが、主な仕事は農場全体を1つの生き物として「群単位」の診療と治療をすることです。こうして、産業として農場の生産成績の向上のサポートをします。
養豚の仕事は消費者に豚肉を提供する事です。 私たち養豚管理獣医師の大事な仕事として「安全な豚肉を提供すること」があります。 獣医学的な観点から食の安全を守ることも重要な責務です。
養豚管理獣医師は、豚を健康に育てるように定期的に農場に訪れています。農場全体を見回って、病気の豚はいないか、発育が悪いステージはいないかを、個体だけでなく豚群として確認します。 ここで病気の豚がいる場合、養豚管理獣医師は自分で治療をするのではなく、農場に治療を指示します。 これは1つの農場に非常に多くの豚がいるからであり、農場のスタッフは獣医の指示に従い適正な用量と用法で注射を打って治療をしたり、エサに薬を添加したりして病気の豚を治療し、健康な状態に回復させます。 養豚農場では、病気を治療することより大切にしていることは、病気にさせないことです。 これを予防衛生といいますが、豚を病気にさせないために、しっかりとワクチンを接種したり、農場内を衛生的にしておくことが大事なのです。 病気を防ぐという意味では飼われている環境も大事です。 豚の発育にあわせた温度管理や、栄養の管理に見落としはないかなどを診ていくのも養豚管理獣医師の仕事です。
衛生的な豚舎で健康な豚を飼う
病気にさせない病気のコントロールと栄養や環境管理が重要